次期衆院選(10月19日公示、31日投開票)で群馬2区から出馬する、堀越啓仁前衆院議員(立憲民主党)と元衆院議員の石関貴史氏(無所属)に、政策を中心に考え方を聞いた。井野俊郎前衆院議員(自民党)は「多忙の折」として取材ができなかった。2回目は前回の落選から立て直しを図り、固い政治信念のもとに無所属で挑む石関氏。

 「大都市・金持ち優先から地方重視・庶民優先」へ

― 政党からの出馬も検討していたと思いますが、今回の無所属出馬については。

石関 約4年間、複数の政党、政治勢力の方々から声をかけていただいた。落選からしばらくして「もったいない」から、と他選挙区での可能性を問われたこともあったが、生まれ育ったこの場所から出馬し続ける、の思いは今後も変わらない。様々なお話を検討してきたが、現時点では自らの政治信条と折り合いがつかず、不利は承知で無所属出馬に至った。

― 掲げている「保守政治の刷新」による政治改革について。

石関 自民・公明党政権に代わる責任政党を構築し、抜本的な行政改革・統治構造改革を推進する。大胆な地方分権移譲改革では、国の権限、財源、一部課税権、生活に関わる一部の法律制定権などの分権移譲を実現する。日本の歴史や伝統の尊重、格差是正など、公正な社会の実現だ。言い換えれば、大都市・金持ち優先から地方重視・庶民優先の政治の実現を目指したい。

 「20万円給付金 コロナ対策繰越30兆円などから」


― コロナ禍で困窮する国民一人ひとりに一律20万円の給付金を提言していますが、バラマキとの批判もあります。

石関 減税も否定はしないが、所得制限のない給付金が手続き上で即効性に勝る。財源はコロナ対策で組んだ30兆円の繰越予算を充てるなど、やる気さえあれば出来る事。お金と時間的に余裕のある一部利用者しか恩恵を受けないGO TO事業よりも、コロナ禍で生活に困窮している国民の支援を優先したい。富裕層はそれなりの税を負担しており、公平性は保たれている。

― コロナ禍で一度崩壊した医療体制の立て直しは。

石関 不足していると言われた医師や看護婦が、東京五輪では必要な人材を確保している。人的資源が足りている中で対応できないのは、医師会などの組織に問題があり、ここに手を付けて必要なら法改正も行うべきだ。まずは第6波に備えた病床の確保。それでも不足するなら野戦病院的な施設の整備も必要だ。

 「検証なき 財政破綻無しとするMMT理論は無責任」


― 1000兆円を越す借金国家でも自国通貨を自由に発行できる国は、財政破綻しないとする「MMT」理論。井野・堀越両候補は、肯定的に受け止めていますが。

石関 これは今のところ理論上の考え方に過ぎず、検証されているわけではない。必要なら政府のお金だからどんどん出せばいいとか、国民全体の資産がこれだけあるのだから国債発行はまだ大丈夫とする声も聞くが、国家や個人の生活を直撃する経済を語るうえで、政治家としては極めて無責任だと言わざるを得ない。

― 若者の政治への無関心をどのように受け止めていますか。

石関 日本では政治の仕組みや役割を教える機会がほとんどないことが起因していると思う。こうした学びの場を増やしていきたい。とはいえ、堅い話だけでは政治から離れてしまう。個人的には最近、若い人に政治への興味を持ってもらうように、動画投稿サイトのYoutubeに1分程度の政治の身近な話題の動画を順次配信している。ぜひ観て欲しい。

座談会
【写真】石関候補の立ち合い演説会で応援する鳩山由紀夫元総理(伊勢崎市内の選挙事務所前で10月23日撮影)

 信念と覚悟を持った政治人生

【横顔・取材メモ】「引かない 曲げない 諦めない」を政治信条とする、強気一辺倒だったかつての議員時代。初めての落選を経て「多少引くことは覚えた」と、少し角を丸くした。複数の企業顧問、コンサルタント業の傍ら、「次も必ず出ます」と伊勢崎駅南口には引き続き事務所を置き、年2回の後援会報発行、時に招かれての集会と日々の政治活動は続けていた。

 「バッジが無くなり離れていく人、変わらず応援してくれる人、折にふれて気に掛けてくれる人」。落選した政治家が味わう、悲喜こもごもの日々。今までは秘書任せで初めて知った、というパスモやスイカの使い方。ごく普通の金銭感覚を取り戻す日常生活の中で、自身を見つめ直し、学ぶことが出来た「充実の4年間」とも振り返った。

 ケネディ大統領がピューリツアー賞を受賞したベストセラー「プロファイル イン カレッジ」(邦題:勇気ある人々)。成功だけとは言い切れない信念を持って政治生活を送った人々に、自身の政治家人生を重ねる。保守刷新の理想を掲げての無所属出馬や「選挙は今回で終わるわけではない」の言葉に、政治家としての覚悟をのぞかせた。 

 学生時代の友人と年に1度の渓流釣りは、多忙な議員時代も時間をやりくりして出かけた。空いている時間は読書や映画鑑賞に充てる。心酔している小津安二郎監督作品では、代表作の「東京物語」(1953年公開)をベストに挙げる。大人向けアニメだが、子供たちと一緒に観ている明治末期の北海道・樺太を舞台にした金塊をめぐるサバイバルバトル漫画「ゴールデンカムイ」。「『鬼滅の刃』より食いつきがいい」と子供たちの反応に驚いている。(2021年10月17日)。

              【1】 【2】