【写真】群馬県伊勢崎保健福祉事務所。左後方建物は伊勢崎佐波医師会病院

市保健所設置に向け費用対効果を検証
臂伊勢崎市長に聞く―2022【2】(2022年3月31日)

 市保健所設置や伊勢崎織物組合所有の土地活用協定締結は、今後の保健行政や中心街の活性化に向けて、数年間をかける新たな取り組み。一方、同じ初でもネーミングライツは、新年度中の実施が見込まれる。「低い市民所得」の要因と改善策も聞いた。

 ― コロナ対策の最前線を担っている群馬県の伊勢崎保健福祉事務所ですが、市はより迅速な対応に向けて、自前の保健所設置に動いています。政令指定都市と中核市(前橋・高崎市が該当)以外の市で保健所を設置する場合、保健所政令市への移行が求められますが、その取り組み状況を教えて下さい。

 臂市長 これまでも山本一太知事をはじめ群馬県には意向は伝えている。新年度はさまざまな角度から、本市が保健所を設置することのメリットとデメリットを検証する。初めて保健所政令市となり、人口規模では伊勢崎市と同程度の神奈川県茅ヶ崎市など、全国に5つある保健所政令市へのアンケート調査を実施していく。そのうえで、あらためて取り組む意義があるか否かを議会や市民の皆さんに示したい。

 ※編集部注:茅ヶ崎市は神奈川県が郊外の衛生研究所内への保健所移転計画を機に、現在地の利便性などを考慮し、2017年4月に保健所政令市。県保健所の建物をそのまま借用、現在に至る。人口(3月1日現在)と一般会計当初予算(2022年度)を比較すると、茅ヶ崎市約24万人/約765億円、伊勢崎市約21万人/約777億円。

 ― 伊勢崎市織物協同組合が曲輪町に所有する土地(7900平方m)活用も新たな試み。市は昨年、組合と協定を結びましたが、どのような活用、事業手法を考えていますか。

 臂市長 組合の協力に感謝し、協定の目的でもある、中心市街地の活性化と持続的発展につながる活用を目指したい。組合の意向を十分に踏まえ、まちのにぎわいを創出し、本市の魅力を発信できる内容を盛り込みたい。複合施設を検討することになると思う。開発手法としてはPPPやPFIなど、官民連携による整備手法導入も視野に入れている。初めての試みとなるだけに我々も学ぶところは多いし、対外的にも市のイメージアップにつながるはず。そんな取り組みになればと思う。

※PPP(公民が連携して公共サービスを提供する枠組み)、PFI(公共施設の建設、維持管理、運営に民間資金とノウハウを活用する事業手法)。

 ― 公共施設の名前(愛称)に企業名や社名ブランドをつける「ネーミングライツ」。既に昨年、需要調査を終えていますが、実施までのスケジュールは。

 臂市長 新年度早々には応募企業の募集を始める予定。募集期間は2か月程度で、審査委員会の審査を経て、優先交渉権者を決める。命名権者との契約後は一定の周知期間を設け、実際の施設愛称の使用は、10月中までにはと考えている。本事業を新たな財源確保の手法として定着させ、本市と命名権者企業の事業効果を検証しながら、対象施設の追加などを考えていきたい。他自治体が先行する事業だが、本市では公共施設に一民間企業名を冠するのは、行政の公平性などから抵抗があったのかもしれない。

 ― 市民にとっては意外、驚愕の「低い市民所得」。就任前の臂市長の指摘で初めて知る市民も少なくありませんが、その要因と改善策を教えて下さい。※最新の2017年度の1人当たりの市町村民所得は、約286万円と群馬県内12市中最低(最高は太田市の約397万円)。

 臂市長 市内誘致企業に市外の方々が従事、3次産業への依存度の高さ、事業承継されずに高齢化、半事業・半年金の多いことなど、要因は複数ある。対策の一つが、雇用の創出と事業者が利用しやすい更なる支援制度、体制の充実。商工団体、金融機関と連携したビジネスマッチングイベントの市内開催など、市内大手と地元中小企業との関係も強化したい。地場野菜を活用した商品開発など、野菜のブランド化による価値向上の農業振興。高齢化や後継者不足で事業承継が難しい中小企業には、商工団体と連携・サポートしていく。市外在住で市内企業従事者には、移住・定住につながる施策を推進するなど、きめ細かく対応していきたい。
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2021年伊勢崎市長インタビュー