【写真】資料仮保管庫で新聞を手に取る重田会長、会員の久保田幸男さん(左端)、萩原利一さん(右から2人目)、堀地和子さん

殖蓮史談会が月刊新聞発行で情報共有・発信
寄贈資料の仮保管庫確保 活用策を模索

 地域の郷土史研究会は高齢化と会員減少、コロナ禍も加わり活動が停滞している。殖蓮史談会(重田泰嗣会長)は、「活動の活性化に」(同会長)と1月から月刊「殖蓮史談新聞」の発行を始めた。情報の共有化と発信強化で活動を知ってもらい、会員を募っている。OB会員から譲り受けた膨大な資料の仮保管庫も確保し、それらの活用方法を模索していく。

 新聞はA3(297ミリ×420ミリ)サイズで、題字背景に淡いピンクを用いた2色、片面刷り。印刷ができるPDFで紙面を制作し、例会時や欠席会員、OBなど周辺関係者に配っている。紙面は会員から譲り受けた文書や書籍資料などの活用、明治の初めまで基礎教育を施した下植木町の正誼堂跡地の説明版改修、史跡巡りの報告、その他さまざまな取り組みを紹介。重田会長のコラム・エッセー的なコーナーも設けている。

殖蓮史談新聞1号

【写真】2022年1月1日発行の「殖蓮史談新聞」創刊号

 執筆、編集を一人で担当している重田会長が、紙面制作で活用したのは、チラシデザイン制作の無料テンプレート。現役時代にテレビ用集積回路の設計に携わるなどの手慣れたパソコン作業で編集している。月刊とはいえ、重田会長の歴史へのロマンが高まると、ペースは早まる。2月は2号から4号まで一気に発行している。

 物故会員から譲り受けた文章や書籍資料は「地域の歴史を後世に伝える」(重田会長)ために、整理・保管・活用が課題だった。このほど下植木町在住の会員から物置として使っていた木造工場跡の提供を受けた。仮資料保管庫としてのスペースを清掃し、収納棚なども確保。今後は文書・書籍資料の引っ越し作業に入る。

 書籍資料の活用では、伊勢崎市が行っている、持ち出しや返却に制限のない「いせさき街角文庫」的な利用も検討している。会員には同方式で貸し出し、不要になったら郷土史に興味のある人に譲るなどして、活動の輪を広げる。同会の18人の会員は最年少が64歳、最高齢は97歳で、平均年齢は70代半ば。殖蓮公民館サークルとして毎月第2水曜日の午前中に例会を開いている。入会希望、体験入会など、その他問い合わせも殖蓮公民館(0270-26-4560)で受け付けている。(2022年2月25日)
【写真】反物から生地を選び、ジャケットとして着用する澤浦さん。右手女性はカフェくろばらのオーナーで、着用の袖なしコートも銘仙生地から仕立てた

一反の伊勢崎銘仙から男性スーツ仕立てる
「需要喚起の一助に」司法書士の澤浦さん

 緑と黒の市松模様は大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の主人公、竈門炭治郎の羽織を思い浮かべるが、司法書士の澤浦健さん(伊勢崎市馬見塚町、80歳)は、赤と黒の市松模様の伊勢崎銘仙生地から男性用スーツを仕立てた。銘仙生地は元々女性用に織られ、生地幅なども男性スーツの仕立てには不向きだった。ほとんど前例がないというが、澤浦さんはちょっとした遊び心で、あえて挑んだ。

 かつては銘仙の一大産地だった伊勢崎。現在は需要減少と生産者の高齢化で、新たな生産が立ちいかない。とりたてて銘仙ファンというわけではなかったが、当時の栄華を思い起こし、在庫に限りがあることや需要喚起の一助に、と思い立った。周囲からは着物で、と勧められたが、普段から身につける機会や習慣がなく、あえて洋服にこだわった。選んだ柄は日本古来の伝統模様の一つで、赤と黒の長方形を格子状にシンプルに並べたデザイン。黒地には矢羽のような赤い透かしを織り込んでいる。

 伊勢崎銘仙の一反の長さは約12mで横幅が約36cm。「横幅が狭く、男性用スーツの生地量としても厳しいかなと思ったが、澤浦さんが細身で小柄なことから何とかなった」と、仕立ての苦労を語るのは、澤浦さんとは旧知で仕立て業を営んでいた入山啓子さん(74歳、伊勢崎市東小保方町)。仕上がりは気軽におしゃれを楽しむテーラードジャケット風で、袖や丈は短くし、ポケットはズボンの右側にだけ、小さく控えめに付けた。澤浦さんは「気持ちがうきうきしてくる。軽くて肌触りがいい」と着心地を語る。

 暖かくなったら「東京・銀座を歩いてみたい」と、伊勢崎銘仙スーツの着用プランを考えている澤浦さん。司法書士として現在は、遺言、相続、後見に特化した活動を続けている。裁判所の家事・民事調停委員も歴任した。旺盛な好奇心と積極的な活動は80歳の今も衰えることを知らず、太極拳、詩吟、書道、合気道を楽しんでいる。最近は指先の鍛錬も兼ねて、楽譜だけの独学でピアノを始めた。

 伊勢崎銘仙は、明治から昭和にかけて女性の人気を集め、一大産業として地域の発展を支えた。織る前の糸を先に染める平織り絹織物で、たて糸とよこ糸に色柄をつけ、機でそれぞれの糸を1本1本合わせ織るのが特徴。最盛期の分業化で高度な技術を誇ったが、需要減退後は職人の高齢化もあり、商品生産が立ちいかなくなっていった。伊勢崎織物協同組合にも販売在庫は200反以上あるが、銘仙はこのうち30反程度で、一部は組合員からの預かり販売という。(2022年2月4日)
【写真】銭兵商店に残る大きな柱時計と取引先に年賀タオル代わりに配った釘袋・布袋

中心街商店の歴史にふれ、未来探る活力に「伊勢崎まちなか文化祭」
まちなかギャラリー、各種講演会・演奏会・展示会など多彩に


商店に残る古い商売道具などから、まちの歴史や文化を見つめなおすなど、同時期開催の地域の多彩なイベントを通してまちの未来を考える「第1回 イセサキ☆ソノサキ 伊勢崎まちなか文化祭−愛と愛に挟まれたまち I−SESAK−I−」が10月31日から11月7日まで、伊勢崎市内の中心街で開かれている。相川考古館を事務局(0270-25-0082)に、同学芸員の相川裕保さんを中心とした有志で実行委員会を組織し2年前から準備を進めていた。

まちなかギャラリー「我が家の逸品」は、中心街の約30商店の古い商売道具や生活雑貨など歴史の一端を伝える品々を見ることができる。お米の内山の錻風袋(米の重さを計り、そのまま袋に入れるための道具)、和菓子の舟定屋の餡練り棒。渋澤製パンには単位が「貫」のままの昔の秤、パルク岡村の明治40年頃の本町商店街通りの街並み写真。親玉商店にも親族が渋沢栄一の運転手を勤め、その縁でもらったという渋沢の写真がある。

創業は約400年前に遡る1625年(寛永2年)の日用雑貨品を扱う銭兵商店。店内の壁に掛けられた柱時計は、1927年(昭和2年)に譲り受けて以降、最近はネジ巻の頻度こそ増したが、現在も動き続けている。直径50センチの時刻版には外国のメーカー名などが刻まれていた。修理の際に「かすれていたためか、きれいにされてしまった」と店主の久保田荘三(85歳)さんが残念がる。取引先などに年賀タオルのように配っていた釘袋・布袋には、砂糖・紙類・荒物他、保険代理店などの当時の扱い商品を宣伝している。腰に下げるための紐を通すフックがついており、電話番号は導入の早さをうかがわせる51番。

会期中は市図書館100周年事業、ギャラリーM「秋季日本画交友展」、多文化茶論粋庵「伊勢崎の電話番号物語」、相川考古館「群馬の博物館黎明期」などを開催。1日限定イベントは「源氏物語朗読会」、ピアノ演奏会、伊勢崎検定、秋の茶会、ファミコン体験、合唱団コールーエのポップスコーラス会を催す。チラシ裏面にはそれぞれのイベントを案内。パンフレットにはエリアごとのイベント日程や各店の逸品解説も掲載。伊勢崎の地名からその歴史を説き起こした企画趣旨では、相川さんが地元に寄せる熱い思いを語っている。(2021年11月2日)
【写真】例会(公演)予定を紹介する坂本和枝事務局長(左)と事務局員の内山初江さん

劇団と演劇文化を守る誇り共有し会存続へ
コロナが会員減少に追い打ち いせさき演劇鑑賞会


 新型コロナウイルスの感染拡大が、市民の文化活動にも大きな影を落としている。いせさき演劇鑑賞会(小倉由美子代表幹事)は、会員の減少にギリギリの運営を余儀なくされている。会では「地元で演劇を観ることができる喜び、劇団とともに演劇文化を支えている誇り」(坂本和枝事務局長)を内外に呼びかけ、存続に奮闘している。群馬県内では3鑑賞会のうち前橋演劇鑑賞会が会員減少により、4月7日の最終公演で幕を下ろしている。

 1988年創立の「いせさき労演」(2001年、現名称に変更)は、翌年3333人の最大会員数を記録した。演劇文化活動が盛んな時代背景もあり、伊勢崎市文化会館を会場に年間8例会(公演)で、1例会3日間の3ステージをこなしたこともある。その後は娯楽の多様化、高齢化などで会員は減少の一途を辿っている。ただ低迷の中、ここ数年は400人前後で推移し、盛り返そうとしていた。その矢先、コロナが追い打ちをかけ、現在は300人を切っている。

 会員は月会費2800円で年6回、様々なジャンルの作品を鑑賞している。特徴は3人以上の会員でつくるサークルによる運営活動。各サークルが事前に希望例会(公演)を選び、劇団を迎え入れる準備から公演終了まで対応し交流を深めている。サークル活動を通した会員拡大は、運営の大きな柱。会員の入退会が日々続く中、前回例会より一人でも多い「前例会クリア」を会員に呼び掛けてきたが、達成できない例会が続いていた。

 全国には119(2020年8月現在)の演劇鑑賞団体が、12のブロックに分かれて活動している。いせさきが所属する関越ブロックは、高崎と埼玉県内の本庄、深谷、秩父の5団体で、劇団公演はブロックを中心に日程が組まれている。公演では関越ブロック作成のコロナ感染対策を徹底。会場換気、検温・手指消毒、密回避の入退場の工夫、終演後の座席消毒、劇団関係者の事前PCR検査など、安全・安心運営に取り組んでいる。

 全国連では昨年、苦境に立たされた劇団への全国連の連帯カンパを実施。いせさきでは昨年の8月例会会場で呼びかけた。全国の例会会場で集まったカンパの総計は3852万9234円で、28団体に各137万円を送っている。坂本事務局長は会存続に向けて、ある演劇代表者の言葉「演劇は舞台を重ね、客と交わることで成長する。演劇という文化の継承もできる。しっかりとした鑑賞組織があって、劇団の公演ツアーを可能にしていく」を紹介。会員は観劇にとどまらず「劇団を支え、演劇文化を守っているという誇り」をあらためて強調した。(2021年5月9日)
【写真】開放的なキッチンとカウンター席のオトノマ店内(松浦さんと奥さん)

音楽と飲食楽しめる音楽酒場「オトノマ」開店
シンガーソングライター松浦たくさんが“集いの場”実現

 都内でのバンド活動を引き上げて伊勢崎に移住後、音楽で地域を盛り上げる活動に取り組んでいるシンガーソングライターの松浦たく(ボランティア・ライブ活動団体 ヒューマンレコード代表)さんが3月30日、音楽酒場「オトノマ」(音の間 伊勢崎市茂呂町2-3502-4 電話:0270-50-0749)を開店した。音楽を中心に、楽しみながら集える場を以前から模索し、コロナ禍で実現にこぎつけた。

 開店したのは国道354号線沿い「とりせん茂呂店」交差点のほぼ対角地。店内はオープンキッチンのカウンター6席、4卓16席に、キーボードやベースギター、ドラムなどをセットしたステージを設けている。青森のなんばんみそ豆腐(280円)、青森のしそ巻き梅干し(2ケ200円)など、青森の食材にこだわった。伊勢崎移住の1年前に東京で結婚した、青森出身でヒューマンレコード所属歌手、松浦さんの奥さんが腕を振るう。

 ステージでは松浦さんが1曲200円で生歌を披露する他、来店者が飛び入りで演奏、歌も歌えるオープンマイクを実施。大型スクリーンではスポーツや映画、各種イベントのパブリックビューイングが楽しめる。5月以降の日曜日はマジックや演劇、紙芝居、ワークショップ、パーティーなど各種イベントの貸し切り営業も行う。営業時間は午後6時〜11時で、月曜定休。昼間はおにぎりランチを始める予定。

 広島県出身の松浦さんは、上京後に本格的なバンド活動を始めている。メジャー活動を経てその意義を問い直した2011年、ソロ企画ライブ、老人ホーム慰問ライブなどに軸足を移す「ヒューマンレコード」設立。伊勢崎の花火見学を機に、この地を盛り上げてと誘われ、2015年に移住。音楽活動の他、街づくり事業イベント、いせさきFMパーソナリティーなど多方面で活動している。(2021年4月7日)

いせさき新聞「この街ピープル」2017年9月1日掲載
【写真】伊勢崎銘仙の生地で制作したテディベア

予約待ちの人気 伊勢崎銘仙プランナー金井さん手作り
色鮮やかで表情豊かなオンリーワン「銘仙テディベア」

 伊勢崎銘仙プランナーの金井珠代さん(伊勢崎市波志江町)が手作りしている、クマのぬいぐるみ「銘仙テディベア」。ビンテージ着物の生地を使った色鮮やかで独特のデザイン柄の愛らしい表情が、口コミで広がり人気を集めている。市内2カ所で販売しているが、他の依頼などは予約待ち状態。伊勢崎銘仙の紹介、活動を記録している自身のホームページで、希望者の問い合わせは受け付けている。

 「銘仙テディベア」は、座った状態の高さが20センチ前後で、重さは140グラム台から160グラム台。生地は金井さんのコレクションの中から選び、手のひらと足裏は別柄を使用している。首飾りは「Isesaki Meisen」と刻んだ革製のオリジナルチャーム。アクセントとして左手に抱えた銘仙ブーケは、ピンを外せばブローチとして使える。中綿は抗菌ポリエステル綿を使用し、手足と首にはハードジョイントが入り、動かすことができる。

 「銘仙グッズ」としてこれまで、ポストカード、コサージュ、コースター、マグネットなどを商品化してきた。コロナ禍、巣ごもりなどで「今求められている癒しに」と思い立ったのが「銘仙テディベア」。昨年7月から準備にかかり、「テディベアの日」の10月27日から、伊勢崎神社(本町)と美容室Cuet(太田町)で販売している。

 生産は型紙作成から裁断、ミシン縫い(細部は手縫い)まで全て、友人と2人で手作りし、一体の制作にほぼ一日かかる。販売所で品切れしないようにと、これまでに80体ほど制作。関係者からの依頼やリピーターも増えているため、新たな注文依頼に対応できない状態だ。「銘仙への思いを込めた一体一体の手作り品」(金井さん)として量産化は考えておらず、インターネット販売は行わない。価格は一体6000円。(2021年2月3日)
【写真】講演中の特別ゲストの中村紀雄さん(左)。書籍は「伝説の『どりこの』」

多士済々が毎月 思い入れの深い書籍紹介
特別ゲストやビブリオバトルも 赤石読書会

 多文化茶論「粋庵」(伊勢崎市本町 茂木園2階)を会場に、会員が毎月それぞれのお気に入りの本を紹介し、参加者が感想・意見を語り合う読書グループ「赤石読書会」(桐野嘉六会長)。事務局の茂木克美さんが伊勢崎ロータリークラブの仲間を中心に呼びかけて昨年1月に発足し、丸2年を迎える。取り上げる書籍は、著名な名作や個々に思い入れの深い作品など多彩。特別講師例会など、他のユニークな活動も含めて紹介する。

 複数の発表者が一定の持ち時間に、お気に入り・お薦め本を持ち寄り紹介する書評ゲーム、ビブリオバトル。発表者も加えた参加者で、一番読みたくなった本を決定する。8人が参加した6月例会では、「十二人の手紙」(井上ひさし著)、「(池波正太郎の銀座日記」(池波正太郎著)、「一週間」(井上ひさし著)の三冊が紹介された。書評は割れたものの、票は均等に入った。

 10月例会で外部講師として招いた元群馬県議会議長で著述家の中村紀雄さんは、自著の「シベリア強制抑留 望郷の叫び」を解説した。ロシア訪問の際に国立古文書館で、存在は知られていたものの日本人として初めて入手した「スターリン大元帥への感謝文」(原本コピー)で、帰国したいがために媚びへつらう、日本人捕虜の自虐的な内容を紹介。極寒の地で過酷な環境を生き抜くなか、人間の尊厳を失っていく苦悩を感謝文から読み解いた。

 昨年11月例会で取り上げた「伝説の『どりこの』」(宮島英紀著)。昭和5年の販売開始から終戦まで、怒涛の宣伝広告で、当時の日本人を熱狂させた滋養飲料の歴史をルポした書籍だ。どりこの発明者は伊勢崎市出身の高橋孝太郎博士。販売したのが桐生出身の「雑誌王」講談社創設者の野間清治。本を取り上げた例会担当者の市内自宅の近くに、発明者の縁続きだった家があり、付き合いのなかで奇跡的に所蔵していた幻の「どりこの」が参加者にふるまわれた。

 例会の最後には事務局の茂木さんが、川柳風の短詩書評を毎回寄せている。問合せ・参加希望などはその茂木さん(090-4703-9408)へ。(2020年12月16日)
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